おともだち


絵・ムクゲさん
 
 
 
 昔々、あるところに猫がすんでいました。                               
 
「あーあ、腹減ったニャーッ」                                     
 猫は昨日から何も食べていません。あまりにもお腹が減って動くこともままなりません。そこへ親友のネズミが
やってきました。                                           
 
「やあ、僕の一番の親友の猫君。どうしたんだい? 元気がないようだけど」                
「ああ、オイラの心の友のネズミ君か。実は腹が減って死にそうなんだよ」                 
「ええ本当かい? それは大変だ。ちょっと待ってって」                         
 そういうと、ネズミは猫の家から出て行きました。しばらくしてネズミは食料を持って戻ってきました。   
 
「僕の食べ物を分けてあげるよ。遠慮なく食べて」                            
 ネズミの心遣いに猫は涙を流して感激しました。                            
 
「本当かい、ネズミ君。君はなんていい奴なんだ。おお、心の友よ」                    
 猫のオーバーなリアクションにネズミは少し照れくさくなりました。                   
 
「よしてくれよ。親友として当たり前じゃないか」                            
 ネズミの言葉に猫は益々感動しました。ところが、ネズミが持ってきた食料を全部平らげたのに猫はまだ不満気
です。                                                
 
「どうしたの? 猫君」                                        
「こんなんじゃ全然足りないニャーッ」                                 
「ちょっと待ってって、もっと持ってくるから」                             
 しかし、それすらも猫の胃袋を満たすことはできませんでした。当然です。猫とネズミは食う量が全然ちがうの
ですから。                                              
 
「こんなんじゃ足りないニャーッ。もっとないかニャーッ」                        
「困ったなぁ、もう食べ物はないよ」                                  
「ああ、腹が減って堪らないニャーッ。もう我慢できないニャーッ。お前を食ってやる」           
 パクッ、ムシャムシャ、ゴックン。                                  
 
 
 
 
おしまい
 
 
 
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