南斗孤鷲拳のシン
前に友人と話していて、北斗の拳で思い出すのは南斗聖拳のあまりもの弱さだなとか言ってたんで
すよ。シン然り、レイ然り、シュウ然り、サウザー然りでしょ。確かに、シンはケンシロウに圧勝し
てユリアを奪っていますが、甘さを捨てたケンシロウの前では雑魚同然でした。シュウも幼いケンシ
ロウには楽勝だったけど、成長したケンシロウの敵ではなかったし、サウザーも体の秘密を暴かれて
からは同じく敵ではありませんでした。まあ、サウザーの場合は秘奥義で敗れたので他と一緒にはで
きないかもしれませんが(でもサウザーも奥義出してたよな・・・)。
それはさておき、シンって弱すぎるとは思いません?回想シーンでケンシロウを倒した以外に見せ
場は無いんですよ。それに、この二人は強敵(とも)だったはずなんですが、二人がいつ知り合った
のか、そもそも二人の友情を示すエピソードが一つも無いんですよね。本当にこの二人は友達だった
のか疑問に思います。
そんで、友人に「シンって何であんなに弱かったと思う?」って聞いたことがあります。そしたら
「ユリアを失った悲しみで腑抜けになっていたのでは」という答えが返ってきました。なるほど、強
敵(とも。本当は友達と変換するのが正しいんだろうけど、北斗の拳はこの漢字ではないとしっくり
こない)を裏切ってまで手に入れたいと思うほど好きだったのに、自殺未遂という全否定の行動まで
されて急いで駆け付けてみたら寝言でライバルの名前を言われたらそりゃショックを受けるわなと当
時は思ったんですが、いまは違います。だって、南斗聖拳108派のトップに立つ一人ですよ。女に
振られたぐらいで拳が鈍るわけはないじゃないですか。シンは持てる力を振りしぼってケンシロウと
闘って敗れたのです。
で、シンの敗因ですが、端的に言って実力差でしょう。そもそも、北斗と南斗には決定的な実力差
があるのです。だから、特異体質だとか相手にやる気がなかったとかで無いと南斗は北斗に勝てない
んですよ。特にラオウクラスともなると、レイのような達人でも「指先一つでダウンさ〜♪」になる
んですな。それと、前に対戦したことがあったのも大きかったと思います。ケンシロウ自身「俺に二
度の敗北はない」と言ってますが、これは一度見た相手の動きを見切るからです。北斗神拳には水影
心という一度闘っただけで相手の技を自分のものにできる奥義があり、そんな翼くんみたいなことが
できるのなら相手の動きを見切るぐらい容易いことでしょう。ケンシロウもシンの技は見切っている
と言ってますしね。
さて、シンの南斗聖拳は原作・アニメでは名称不明だったんです。北斗神拳と対になる存在で、北
斗のケンシロウと南斗のシンみたいな感じだったんだけど、その後南斗無音拳とか南斗水鳥拳とかが
出てきっちゃったんですよねー。んでもって、南斗六聖拳の一人に数えられるんですが、原作でもア
ニメでも最後までシンの拳法は名前が不明のままでした。後付け設定で南斗孤鷲拳と名付けられたん
ですが、小生がそれを知ったのはコンビニで置いてある復刻版を買ってからでした。
その南斗孤鷲拳ですが、他の南斗聖拳とちょっと違うんです。南斗聖拳は切り裂き系が多いのに、
南斗孤鷲拳は突き刺すんです。ケンシロウに最後に放った奥義も突き刺し系でした。他に突き刺し系
の南斗聖拳はジャギが使った名称不明の拳がありますが、あれってシンの拳に似てません?だから、
最初はシンの拳を水影心で盗んだと思いました。でも、違うみたいで確かにケンシロウのセリフにも
それはわかります。構えも違いますし。動きもスローですし。
とまあ、ダメダメのシンですが、ユリアへの愛はケンシロウにも負けてませんでした。ユリアの気
を惹こうとドレスとか宝石とかをプレゼントしますが、ユリアは一向に振り向いてくれません。シン
がどのような手段でそれらを手にしたのか知っているからです。ユリアが欲しいのはケンシロウのよ
うな優しさと温もりです。しかし、シンはそれを否定します。そして、前以上に略奪に精を出してい
きます。でも、ユリアの気持ちは変わりません。シンもどうすればユリアを振り向かせることができ
るのかわかっていたかもしれません。それはケンシロウのように接することです。一見、簡単なよう
ですがシンにはどうしてもできませんでした。もし、それをしてしまえばそれは男としての敗北を意
味します。力こそ正義という思想でユリアを奪ったシンに今更ケンシロウを見習うなんて死んでもで
きないことです。だから、シンは暴力で得た物品でなんとかユリアを振り向かせようとするんですが
なかなかうまくいきません。しまいには街までもプレゼントしますが、ユリアは心を開いてくれませ
ん。それどころか、自分のせいで多くの人間が犠牲になったことに心を痛める毎日でした。ケンシロ
ウから引き離されてからの日々でユリアは病気になってしまいます。皮肉にもシンは愛する女性を自
らの行いで追い詰めてしまったのです。病気と精神的苦痛でうつ状態になっていてもおかしくないユ
リアはとうとう耐えきれなくなって高いところから飛び降りてしまいます。それを目の当たりにして
ようやくシンは自分がユリアを苦しめ追い詰めていたことに気づきます。幸い、ユリアは五車星に助
けられ一命を取り留めます。ユリアをこのまま連れて行くと言う五車星にシンは俺が守ると主張しま
す。しかし、飛び降り自殺を防げなかった事実を目撃している五車星からしたら、安心して預けられ
る相手ではありません。そこへ、ラオウの軍団が迫っているとの情報が入ります。ラオウもユリアを
狙っていること、逆らうものは殺してしまう性格をよく知っているシンは闘っても到底勝ち目の無い
相手であることから五車星の説得に従ってユリアを彼らに引き渡すことに同意しました。それでも、
未練があったのですが、ユリアが無意識に呟いたケンという言葉を聞いてようやく決意します。自ら
はユリア殺しの汚名を被ってケンシロウの怒りを真っ向から受けて最後は男としての拳士としてのプ
ライドから自ら命を絶ったシン。彼の亡骸を抱きながら歩くケンシロウにはただ虚しさがあるだけで
した。そう、ガルマを謀殺した赤い彗星のように。
南斗五車星最強の拳士
南斗五車星とは南斗正統血統ユリアを守護する5人の戦士で、南斗極星が北斗神拳によって地に墜
ちた後に活動を開始します。そして、弟・トキとの因縁の闘いに決着をつけたラオウが再び覇権掌握
に動き出すと、南斗六聖拳最後の将となったユリアを守るためラオウに闘いを挑みます。しかし、あ
まりにも強すぎるラオウの前に海のリハクを除く4人が命を落としました。ラオウに傷らしきダメー
ジを負わせたのはリハクの罠を除けば雲のジュウザのみという体たらくな結果に終わりました。
以上の経緯で五車星最強はジュウザのはずなんですが、以前にジュウザよりも山のフドウが最強だ
ったという議論があったのを見たので検証したいと思います。
まず、フドウ最強説の根拠はジュウザはラオウの進軍を阻止できなかったが、フドウはラオウに恐
怖と敗北感を与えて撃退したということにあります。確かに結果がすべてというのであれば、フドウ
が最強ということになります。しかし、前述したようにフドウはラオウの肉体になんらダメージを与
えていません。最後に一撃を喰らわせようとしますが、ラオウの部下が放った矢に射抜かれて力尽き
ました。まあ、矢がなかったとしても既に死に体だったフドウの拳ではラオウの鋼鉄の肉体を傷つけ
ることはできなかったでしょう。
では、ジュウザとフドウが闘えばどっちが勝つでしょうか。それは、二人のラオウとの闘いから判
断してジュウザでしょう。ジュウザの撃壁背水掌はラオウに秘孔さえ突かれなければ致命的なダメー
ジを負わせていたかもしれない技です。フドウ相手に使えば100%の威力を発揮するのは間違いあ
りません。それ以外にもジュウザの我流の拳はラオウほどの達人ですらその動きを読むのは困難で、
フドウ程度では翻弄されてしまうだけでしょう。それに、ジュウザもフドウに負けず劣らずのしぶと
さを見せています。秘孔を突かれながらも将の正体を言わなかったしぶとさは賞賛に値します。ラオ
ウもジュウザを強敵と認めて彼が倒した拳士の中では唯一丁重に葬るように部下に厳命しています。
それに比べフドウは子どもというプラスアルファに加えラオウがケンシロウに恐怖を感じた後という
ことも加わっていたことを見逃してはいけません。もし、ラオウがケンシロウに苦戦して、さらにケ
ンシロウの哀しい目に恐怖を感じたという事がなかったら、たとえ子供が哀しい目でラオウを見たと
してもラオウは恐怖を感じないでしょう。以上の点を踏まえて、五車星最強は雲のジュウザと断言し
ていいと思います。フドウも好きですよ。
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