魔法少女リリカルなのはの設定・追加と修正
ストーリーの概要
基本的に二人の少女が戦うという形で進行します。そのとばっちりで周囲に被害が出たのでフェイ
トとティアナが調査に乗り出します。
前回も触れましたが、ヒロインの二人はゼクエスというミッド式やベルカ式とは別系統の帝王候補
という魔導師で、戦いに勝利して生き残った方がゼクエスの帝王になることができます。神に等しい
力を持つ帝王になるために二人は戦いを繰り広げます。終盤は武装宗教団体なる敵が登場して、ヒロ
インたちと敵対します。
ゼクエス式について
ミッド式やベルカ式とはまったく異質の魔法体系で、この系統の魔導師は5000年に二人しか現
れません。魔女や神官によって選ばれた二人の候補が戦って生き残った者がゼクエスの帝王になるこ
とができます。
この系統の魔法の特徴としましては他の系統の魔法に比べて極端に魔法の数が少ないことでしょう。
ただし、それは半人前の帝王候補の場合で帝王になると世界を改変するだけの力を持つようになりま
す。
さらに、帝王候補になったとしても以前に習得していた他系統の魔法を使用可能ということも特徴
と言えるでしょう。
帝王候補
ゼクエス式の魔法を使う人は帝王候補と呼ばれます。候補者は同じ時代に2人しか現れません。こ
れは二人=世界を二分=勝った方が負けた方の世界も支配する=全世界に君臨するただ一人の帝王に
なるという意味からです。候補者には太陽と月のどちらかのシンボルが与えられます。すなわち、昼
を支配する者と夜を支配する者ということです。太陽のシンボルはさくらに、月のシンボルはルーシ
ーに与えられています。
ディアス
ロストロギアの一つで、相手を意のままに操ることができます。全部で42個あり、全部収集する
と次元世界すべての人間を意のままにできるとされています。
登場人物(前回もやりましたが、おさらいということで)前回はこちら
木崎さくら Sakura Kizaki
Height130.9cm weight27.2kg
高町なのは・八神はやてらと同じ世界の少女。ゼクエスの帝王候補の一人で、相手と視線を合わせ
ることで、相手の意思を一時的に支配する魔法を使います。日食の日に生まれたため太陽を司る帝王
候補に選ばれました。
物心がついた頃から剣道を習い始めて、天賦の才もあってかその実力は大人顔負けです。ただ、ル
ーシーと違って魔法を習得する機会が無かったので、総合的な戦闘力はルーシーに劣ります。そのた
め、序盤ではルーシーに苦戦することが多くありましたが、戦闘経験を重ねるにつれ互角に戦えるよ
うになります。
ゼクエスの帝王になれば亡くした家族を生き返らせることもできると唆されて、またライバルとな
る帝王候補のルーシーに命を狙われたことから戦いに身を投じますが、ルーシーに重傷を負わされた
ことで戦意を喪失します。しかし、母から誰かを倒すためにではなく、誰かを守るために戦うことを
教えられたことを思い出してルーシーを洗脳から救うため立ち上がりました。事件解決後は、ルーシ
ーと和解して友達となり、ルーシーがミッドチルダに住むことにしたのでさくらもミッドで暮らすこ
とにしました。
戦闘力はルーシーにはやや劣りますが、それでもSランクの魔導師を圧倒する強さを見せています。
台詞
「木崎さくらの名において命じます。私の束縛を解きなさい」
「私は信じてる。あなたはそんなに弱くないって」
さくらのデバイス
魔剣グラム
さくらのデバイスはゼクエスの帝王候補専用のもので、主の血液を吸収することで威力が何倍
にもなります。血を吸うことからバンパイアタイプというカテゴリーに分類されます。帝王候補
が展開するHIディフェンスを破ることができる唯一の攻撃手段となります。
さくらの攻撃技
示現斬
垂直に構えた剣を一気に振り下ろす技で、魔剣のパワーを最大にすれば他系統の魔導師なら防
御魔法を破って相手を一刀両断にすることができます。
刺突
さくらは剣道の技の中でも突きが得意で、将来は沖田総司の三段突きをマスターしたいと思っ
ています。そのために練習を重ね、ついには刺すように突くと形容されるまでになりました。
さくらの魔法
他者の意思を一時的に支配する魔法(ゼクエス式)
ゼクエス式魔法の最大の特徴といえる魔法で、相手と視線を合わすことで30分間だけ相手の意
思を支配することができます。一度、意思を支配すれば相手に死を強要することもできる恐ろし
い魔法ですが、ゼクエスの帝王候補やSランク以上の魔導師には通用しません。なお、この魔法
は未変身時でも使用可能です。
さくらのバリアジャケット
すべての世界の空を支配する二つの星、すなわち太陽と月のうち昼を支配する太陽を司るさくら
のバリアジャケットの色は黒となっています。これは黒き太陽すなわち日食を意味しています。防
御力よりも機動性を重視しているため、ルーシーに腹を刺されたときに十分な防御をすることがで
きませんでした。
ルーシー・ブランケット Lucy Blanket
Height140.3cm weight34.5kg
さくらと同じゼクエスの帝王候補の一人で、相手と視線を合わせることで、相手の記憶を自由に変
える魔法を使います。月食の日に生まれたため、月を司る帝王候補に選ばれました。
帝王候補になる以前はミッド式の魔導師で、射撃系の魔法を得意としていました。そのため、接近
戦からミドルレンジからの攻撃までこなすことができ、離れた敵を攻撃することができないさくらに
対するアドバンテージとなっています。といっても、ゼクエスの帝王候補には魔法・物理攻撃を無効
化するHIディフェンスがありますので戦力の決定的な差にはなりませんが。それと、ルーシーは武
装組織に所属していた関係で年齢一桁の頃から実戦経験があり、この点でもさくらに対する優位性と
なっています。実戦経験に関しては、なのはやフェイトも似たようなものですが、幾度も死線を潜り
抜けてきたり、仲間の死を何回も見てきたりと似て非なるものです。同じ実戦経験でも、なのはやフ
ェイトがバトルなのに対しルーシーのそれはウォーズという違いです。
なお、帝王候補になる以前のミッド式の魔導師だった頃の魔導師ランクはB+ですが、帝王候補に
なったことで魔力がアップしてSSSになっています。ゼクエスの帝王候補は魔力探知には反応しな
いのであくまでも推定です。
親や仲間を戦争で亡くしているため自分が帝王になることで争いが無い世界を構築しようとします
が、第8話でのさくらとの戦いで左目を失ってからは他人を犠牲にしてまでの夢の達成には何の価値
も無いと悟りますが、ゼクエスの力を悪用としようと企むフォーサイズに拉致されて洗脳されてしま
います。時空管理局地上本部での戦いでは、なのはとフェイトの二人を相手に互角以上の戦いを繰り
広げ、なのはと1対1の戦いになってからはなのはを圧倒する強さを見せましたが、さくらの体を張
った説得に動揺します。最後は体内のディアスをなのはに破壊されて洗脳から解放され、ティアナの
スターライトブレイカー発射に魔力を提供してフォーサイズの空中戦艦撃破に貢献しました。事件解
決後は、洗脳されていたことと空中戦艦撃破に協力したことで罪は不問となりました。さくらとも正
式に和解して友達になることを約束します。ゼクエスの力を封印したルーシーは執務官を目指すこと
にしました。
台詞
「私を憎んでくれても構わない。私は自分がしたことに弁解もしないし、正当化するつもりも無い。
私は私がしたいことをするだけ」
「この眼帯は自分への戒めです」
ルーシーのデバイス
魔槍ハルバード
さくらの魔剣と同じく使用者の血液で力を発揮するバンパイアタイプのデバイスです。槍と斧
が合わさったような形状をしています。
ルーシーの攻撃技
シュツルムシュニット
魔槍を振り回して相手を斬りつける技です。
ブリッツアリガー
相手に突進しながら魔槍を突きいれる技で、パワーを最大にすれば相手の防御魔法を突き破っ
て相手の体を上下に切り裂く威力があります。
ルーシーの魔法
ストライクボルト(ミッド式)
魔力を矢状に形成して撃ちだします。
ファブリックショット(ミッド式)
魔力を広範囲に無数に射出しますが、1発あたりの攻撃力はかなり低くなっています。
サークルスラッシュ(ミッド式)
魔力を円形に形成して放ちます。この攻撃魔法は他の攻撃魔法と違い、高速回転することで相
手を切断します。平たく言えば気円斬と思ってください。命中すれば確実に相手を殺すことにな
るのでルーシーは人に向けて撃たないことを決めています。
プロテクトディフェンサー(ミッド式)
バリアタイプの防御魔法で防御力はさほど高くありませんが、一方向しか防御できないHIデ
ィフェンスと違って全方位防御が可能です。
ベハンドルング(ミッド式)
対象の怪我を治療します。
次元転送(ミッド式)
違う次元世界に移動することができます。
相手の記憶を自由に操作できる魔法(ゼクエス式)
さくらの魔法と違って、この魔法には制限時間がありません。ただし、操作できるのは過去1
年間の記憶だけです。なお、この種の魔法は両目で相手と視線を合わす必要があるため、第8話
で左目を失ってからは使用不可能になりました。
ルーシーのバリアジャケット
さくらのとは逆に防御力を重視した防護服となっています。そのため、さくらと違って重傷を負
うことはありませんでした。
さくらとルーシーが共通して使える魔法(いずれもゼクエス式)
HIディフェンス
あらゆる魔法や物理的攻撃を防ぐ絶対不可侵の防護シールドですが、厳密には主の血液を吸収
したバンパイアタイプのデバイスによる攻撃は例外となります。また、全方位型では無いため死
角が生じてしまいます。
空中浮遊魔法
空に浮かぶことができます。無論、飛行することも可能で高速で移動することもできます。
身体能力強化の魔法
パワーや走力、ジャンプ力といった身体能力を最大4倍まで高めることができます。ただし、
3倍以上は体への負担が大きく多用すれば自らの体を壊す恐れがあります。
高町なのは Nanoha Takamachi
シリーズの主人公ですが、途中まで出番が一切ありません。彼女が撃破した魔導師は一人もいませ
んが、スターライトブレイカーでルーシーの体内にあるディアスを破壊してルーシーの洗脳を解くこ
とに成功しています。
台詞
「ちょっと痛いけど、我慢してね」
フェイト・T・ハラオウン Fate T Harlaown
とある捜査でティアナと一緒に日本に戻っていた時に、さくらとルーシーの戦いを見つけてこれを
制止します。何とか二人の戦いを止めさせようとしますが、なかなか思いを伝えられることができま
せんでした。後半ではやてを班長とする武装宗教団体捜査班に参加してフォーサイズの捜査をするこ
とになり、フォーサイズによるミッドチルダ地上本部襲撃ではルーシーついでバレル・マックスエル
と戦ってバレルを撃破し、秘匿していた空中戦艦で形勢を逆転しようとしたダニエル・ジャッカルを
逮捕するという功績を挙げています。事件解決後は、ミッドチルダで暮らしたいと言うさくらの身元
引受人となって彼女を引き取りました。
台詞
「人はお互いの気持ちをわかってあげたくてもわかることができないの。だから、言葉というものが
あるんだよ」
八神はやて Hayate Yagami
物語にはあまり絡んできませんが、彼女が騎士カリムにさくらとルーシーの事を話したことで二人
の正体が管理局に明らかとなりました。終盤ではフォーサイズの専門捜査班の班長となり、班の陣頭
に立ってフォーサイズと対決します。
台詞
「皆、くじけたらあかんで。日頃の訓練の成果を見せるのは今や」
ティアナ・ランスター Teana Lanster
フェイトの補佐として一緒に日本に来ていたところに、さくらとルーシーの戦いに遭遇しました。
捕縛魔法でさくらを拘束することに成功しますが、ゼクエスの魔法で意思を支配されてしまい自分で
拘束を解いてしまいました。その後、フェイトと一緒にはやての部隊に参加してフォーサイズの幹部
の一人サラとの射撃合戦に勝利し、ルーシーから魔力を提供されて放ったスターライトブレイカーで
空中戦艦を破壊する殊勲を立てました。これらの功績でティアナは晴れて執務官となることができま
した。
台詞
「ごめん、ちょっと協力してくれるかな」
ギルバート・ミハイル Gilbert Mikhail(ダニエル・ジャッカル Daniel Jackal)
新興宗教団体レッドコメットの教祖。数多くの慈善事業で市民から厚い支持を得ていますが、その
裏の顔は洗脳した信者を兵士とする武装宗教団体フォーサイズのリーダーのダニエル・ジャッカルで
す。次元世界のすべての人間を洗脳して自分に服従させる野望を抱いていますが、自身の洗脳魔法だ
けでは到底不可能なため当初はディアスを収集して野望を達成しようとしていました。その後、ゼク
エスの帝王候補が現れたことを知ると、帝王候補を洗脳してそれの黒幕として世界を支配しようと企
み、部下にルーシーを拉致させて彼女を洗脳してしまいました。しかし、ルーシーがなのはによって
洗脳を解かれると、切り札を失ったミハイルは秘匿していた空中戦艦を稼働させ最後の悪あがきをし
ますが、内部に進入したフェイトに捕縛されました。若い頃に顔に火傷を負ったため銀の仮面をつけ
ています。
バレル・マックスウェル Burrel Maxwell
フォーサイズの幹部の一人で、ミハイルの側近中の側近です。ミハイルの命令でルーシーを拉致し
てきました。一時的に相手の視界から消える透明化能力と主からの遠隔操作で敵を攻撃するデバイス
でフェイトを翻弄しますが、彼女に動きを読まれてしまい敗北しました。年齢は20歳。ミッド式の
魔導師でランクはS−。
シャロン・グラディス Sharon Gladys
フォーサイズの幹部の一人で、主に潜入や諜報を任務とします。女医としてミッド地上本部に潜入
している時に負傷したさくらの担当となり、さくらの居場所をミハイルに伝えました。年齢は28歳
で魔導師ランクはA+。
サラ Sarah
フォーサイズの幹部の一人で、ティアナと同じハンドガン・タイプのデバイスを使用します。射撃
の腕と魔力は勝っていましたがデバイスの性能と戦闘センスの差に負けました。ミッド式の魔導師で
ランクはAAA−。年齢は24歳。
シャム Sham
空中戦艦から出撃した航空兵器。球形のボディに翼がついたシンプルな外観で武装も正面の2丁の
銃口のみとなっています。
デストロイヤー Destroyer
シャムと同じ空中戦艦から出撃した地上兵器。出撃前は球形で、戦艦から文字通り球が転がるよう
にして地上に降下(というより落下)し、着陸すると多脚型の戦闘兵器に変形します。全方位型の偏
向シールドで攻撃魔法を跳ね返しますが、一定以上の威力がある攻撃は防ぐことができません。
ストーリー
第1話【二人の少女】
つばめ第3小学校5年の木崎さくらは両親を事故で亡くし、祖父に引き取られていた。さくらの祖父は
剣道の師範で、さくらも幼い頃から剣道を習っていた。そして、この日もさくらは道場に行って稽古に励
む筈だった。いつもと何も変わらない1日。さくらは当然のようにそう思っていた。そんなさくらに届い
た祖父の急死という報せ。優しい家族に囲まれて幸せに育った少女は一転して天涯孤独の身の上となって
しまう。ショックのあまり家を飛び出したさくらは謎の女に呼び止められる。女は言う。「ゼクエスの帝
王になれば家族を取り戻すことができる」と。平常な判断力ができなくなっていたさくらは女の勧誘に乗
ってしまうのだった。
同じころ、さくらがいる世界とは別の世界では内戦で荒廃していた。反政府武装組織に身を置いていた
少女ルーシー・ブランケットは仲間と一緒にいるところを政府軍に襲撃されてしまう。ルーシーは辛うじ
て逃げることができたが仲間を全員殺されてしまった。独り逃げ延びたルーシーは古ぼけた教会に助けを
求めるが、そこで彼女は神官の男からゼクエスの帝王にならないかと誘われる。最初は断ったルーシーだ
ったが、帝王になってすべての世界を支配すれば争いが無くなると説得され逡巡するも最終的に帝王にな
る決意をする。
帝王候補になった二人の少女に告げられた帝王になる条件。それは、ライバルとなる帝王候補を抹殺す
ることだった。
第2話【悲しさと寂しさと】
さくらとルーシーがゼクエスの帝王候補になってから一週間が過ぎた。だが、二人は躊躇していた。帝
王になるにはもう一人の候補者を殺さなくてはならないからだ。さくらはおろかルーシーでさえも人を殺
した事がなかった。そんな二人に彼女らを帝王候補に仕立て上げた魔女と神官は「お前が躊躇しても、向
こうは躊躇しない」と脅迫するが二人は応じなかった。二人は話は無かったことにしようとするが、すで
に運命は少女たちの未来を束縛していた。
自分のために他人を犠牲にすることはできないと言うルーシーを神官はある場所に連れていく。そこは
戦争で全滅した街だった。神官は言う。「お前が躊躇している間にも、ああして人が殺され街が壊されて
行く。こんな悲劇を無くすにはゼクエスの名の下に世界を統治するしかない。人間は人間同士が殺しあう
ことを自ら禁じることはできない生き物だ。だから、人はよりよい絶対者に導かれなければならない」
ルーシーは過去を振り返った。彼女が生まれてすぐに両親は戦闘に巻き込まれて死亡し、彼女は武装組
織に拾われて育てられることになった。そのため、ルーシーは物心ついた時から戦争の悲惨さを目の当た
りにし、彼女自身も幾度となく死にかけたこともあった。やがて、彼女は争いを嫌うようになっていた。
そして、争いが無い世界が作れるならとゼクエスの帝王候補になる決意をしたのだが、帝王になるにはも
う一人の候補者を殺さなくてはならない。何の恨みもない相手を殺すことなんてルーシーにはできなかっ
た。だが、神官の言うようにルーシーが躊躇している間に戦争で人命が失われていく。長考した末にルー
シーが出した結論は自らが帝王になって世界を統治し争いを無くすことだった。
一方、さくらは一人ぼっちの寂しさに打ちひしがれていた。内気で消極的な性格のさくらには友達が無
く、唯一積極的になれるのが剣道の稽古に励んでいる時だったが、それも祖父の死で剣道場が閉鎖された
ことで終わってしまった。帝王になれば家族を取り戻す事もできる。魔女はさくらにそう言った。だが、
そのためにはもう一人の候補と戦わなければならない。ルーシーと違い、戦争を全く知らないさくらに人
を殺すことはできない。そんなさくらの前にルーシーが現れる。ルーシーはさくらにこう言い放った。
「私はルーシー・ブランケット。貴方と同じゼクエスの帝王候補だ。貴方には何の恨みは無いけど、私は
貴方を倒さなくてはならない」その瞳には迷いがなかった。
第3話【初めての感情】
突然現れて攻撃してきたルーシーに狼狽するさくら。あわてて変身して応戦するも戦闘の素人であるさ
くらは苦戦を強いられる。何とか話し合いをしようとするが、ルーシーは聞き入れようとはしなかった。
さくらが戦闘慣れしていないことを見抜いたルーシーは今のうちに決着をつけるつもりなのだ。執拗なル
ーシーの攻撃からどうにか逃れたさくらは自分が児童養護施設に預けられることを知る。だが、人見知り
の激しいさくらに他人との共同生活など苦痛でしかなかった。自分に絡んできた女子児童をゼクエスの魔
法で退けるさくら。だが、それは自身の孤立を深めるだけだった。その様子を見ていたルーシーはさくら
も自分と同じひとりぼっちであることを知るが、彼女を倒しゼクエスの帝王になるという決意が変わるこ
とはなかった。さくらも馴染めない集団生活の中で次第にこの境遇から抜け出すために戦う方へと気持ち
が変わっていく。それでも戦うことに抵抗を感じるさくらだったが、ルーシーとの2回目の戦闘で死にか
けたことで、戦って勝たなければ殺されるという現実を思い知られる。自分を殺そうとするルーシーにさ
くらは初めて相手に対する憎しみの感情を抱くのだった。
第4話【決戦、つばめ第3小学校】
殺されかけたことでさくらは迷いを無くした。生き残るためにも再び家族と一緒に暮らすためにも、さ
くらはゼクエスの帝王になることを決意する。たとえ、自分と同じくらいの歳の少女の命を奪うことにな
ったとしても。3回目の対決で初めてさくらは積極的に攻撃をしかけるが、実力はまだルーシーの方が上
だった。だが、戦うたびに強くなるさくらに焦りを感じたルーシーは一気に決着をつけるべく、さくらの
学校に狙いを定める。生徒と教師を人質にさくらに降伏を迫ろうというのだ。
次の日、ルーシーはさくらの学校を結界で覆った。さくら以外の時の流れを停めたルーシーはさくらに
降伏を迫る。拒否すれば教師と生徒の命は無いという脅迫も含めて。だが、さくらは自分の命を犠牲にす
る義理は無いとルーシーに攻撃を仕掛ける。激しくぶつかり合う二人。二人が持つ魔剣と魔槍の影響か、
二人は互いを憎しみの目でしか見ないようになっていた。天賦の才のさくらと実戦経験豊富なルーシーは
ほぼ互角で容易には決着はつかなかったが、数多くの敵と渡り合ってきたルーシーが次第にさくらを押し
始めた。さくらの懸命の応戦も空しく、ルーシーの槍がさくらの心臓を捉えた。1秒後にはさくらの胸が
貫かれていただろうという際どいタイミングに、ルーシーの槍は何者かのデバイスに邪魔された。いきな
り現れて二人の戦いを妨害したのは大人の女魔導師だった。
第5話【敵か味方か】
さくらとルーシーの戦いを止めた魔導師は時空管理局執務官フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと名
乗り、二人に戦闘停止と事情聴取に応じるよう求める。だが、ルーシーは何も言わずに姿を消し、時空管
理局を知らないさくらはフェイトを敵と認識して攻撃をしかける。やむなく応戦するフェイトだが、彼女
の魔法攻撃はことごとくHIディフェンスに弾かれてしまう。そこへ、ティアナ・ランスターが現れてさ
くらを捕縛魔法で拘束するが、さくらはゼクエスの魔法でティアナの意思を支配して拘束を解かせると、
彼女にフェイトを攻撃するように命じる。その隙にさくらも現場を離脱した。フェイトはそれを追いかけ
ようとするが、さくらに意思を支配されたティアナに邪魔されてしまう。ティアナはフェイトを攻撃する
が、さくらの姿が見えなくなると正気に戻った。
フェイトとティアナは活動拠点としているコテージに戻ると、二人の魔導師について調べた。ルーシー
はミッドチルダの魔導師だったためデータがあるものの、データに記載されている魔導師ランクと実際の
ルーシーの魔導師ランクがかなり違っていた。また、さくらのデータはなく、さらにミッド式でもベルカ
式でもない魔法陣を形成するが魔力が測定できない。さらに、さくらがデバイスに自分の血を吸わせてい
ることも含めてフェイトは上司で兄でもあるクロノ・ハラオウンに報告する。クロノは親友で無限書庫の
司書長のユーノ・スクライアに調査を依頼する。
第6話【思い】
ユーノが謎の魔法について調べる一方、フェイトとティアナは二人の魔導師の行方を捜索した。二人は
何者でなぜ戦うのか。二人が形成する魔法陣は二人がミッドやベルカ以外の魔導師であることを示してい
るが、うち一人はミッド式の魔導師だったはずである。現に時空管理局はその少女の大規模な魔力反応を
探知して調査することにしたのだ。だが、数日捜索しても二人の居場所は突き止められなかった。二人の
戦闘によって周囲に少なからず被害が出ているので何としてでも身柄を確保しなければならない。さらに、
フェイトにはもうひとつ思いがあった。
12年前、フェイトは同じ世界で後に一番の親友となる高町なのはと戦ったことがあった。複雑な家庭
の事情でロストロギアを収集していたフェイトは、同じくロストロギアを集めていたなのはと何度も矛を
交えたのである。しかし、二人は相手を憎んで戦っていたわけではなかった。むしろ、なのははフェイト
に痛い目にあわされたにも関わらず彼女を救おうとしたのだ。この時、フェイトは母親を亡くしているが、
なのはや周囲の人間の助けで立ち直ることができた。戦いという不幸な出会いではあったが、かけがえの
ない友を得ることにもなった。フェイトにとって忘れられない思い出である。そんなフェイトにしたらさ
くらとルーシーが戦っているのは他人事ではなかった。気がかりなのは、フェイトが二人の間に割って入
った時、ルーシーは完全にさくらを殺すつもりでいたことと、さくらがルーシーを憎悪していたことだ。
フェイトは思う。二人は友達になれるはずだ。事情さえわかれば二人を戦わせずにすむ方法が見つかるは
ずだと。
その頃、さくらは遠く離れた町にいた。授業の途中で忽然と消えたために、学校に戻りづらくなったさ
くらは施設にも何も告げずにここまで来たのだ。相手の意思を支配する魔法で食事などには困らない。一
方、ルーシーはとある家族の記憶を操作してその家を活動の拠点としていた。二人は次の戦いで決着をつ
けることを心に誓っていた。
※この回は大半が回想シーンという設定です。
第7話【戦いの理由】
新興宗教団体レッドコメット。時空管理局は以前からこの団体に捜査官を信者として潜入させてきた。
だが、いままでに生きて帰ってきた者はいない。そして、この日も礼拝の場で教祖が女性信者を管理局の
スパイであることを見破る。翌朝、街灯に吊るされている女性が発見された。
二人の魔導師、さくらとルーシーのの行方を追っていたフェイトたちは、さくらについての情報を入手
することができた。二人が戦っていた場所の近くの学校を調べた結果、授業中に突然いなくなった女子児
童のことを訊き出したのだ。木崎さくらという名前と10歳という年齢、家族が皆亡くなって施設で暮ら
しているという事を聞いたフェイトは、さくらがなのはと同じくそれまでは魔法とは無縁の生活をしてい
て、ある日突然に誰かから魔法の力を授けられたと推測するが、その誰かが何者なのかあの魔法は何なの
かまではわからなかった。
その頃、ユーノは無限書庫のスタッフ総出で第3の魔法の系統について調べていたが、一向に何の手が
かりもつかめずにいた。過去に途絶えた体系の魔法も調べられたが該当する魔法は発見されなかった。さ
くらとルーシーの所在も掴めない、さくらが使う魔法の正体もわからない。まさに八方ふさがりの状態で
ある。
だが、事態は思わぬところから進展した。フェイトからさくらたちのことを聞いていた八神はやてが聖
王教会のカリム・グラシアと食事をした際にそのことを口にしたところ、カリムがそれはゼクエスの魔法
ではないかと返したのだ。ゼクエス式については文献などの文字資料は一切存在せず、口述でのみ伝えら
れてきたためカリムも詳しいところまでは知らなかったが、ゼクエス式とはミッド式やベルカ式とは全く
異なる体系の魔法で、そのために魔力の計測が不可能なこと、他の系統の魔法も使用できること、この体
系の魔法が使える魔導師は5000年に二人しか現れず、その二人が戦って生き残った者が帝王と呼ばれ
る存在になることが判明した。帝王とはいかなる存在かは不明だが、はやてからそのことを知らされたフ
ェイトがさくらとルーシーがなぜ相手に殺意を抱いて戦っていたのか理解した。殺さなければ殺されると
いう強迫観念が二人に殺し合いを強いているのだ。このままでは、どちらかが一方を殺してしまうことに
なることを危惧したフェイトは何としてでも二人を見つけることを決意する。だが、すでに二人は最後の
戦いに臨もうとしていた。
第8話【大草原、血に染めて】
さくらとルーシーは別の世界で対峙していた。さくらの住む世界では時空管理局の介入を受けるかもし
れないからと、ルーシーがさくらの同意を得てこの世界に転送したのだ。もはや、二人に交わす言葉は無
かった。生きるか死ぬか、殺すか殺されるかだ。二人ともこの戦いで決着をつもりでいた。激突する二人
の魔導師。相手を攻撃することしか頭にない二人は互いを傷つけていく。そして、激しい戦いの末ルーシ
ーの槍がさくらの腹を貫いた。勝利を確信するルーシー。だが、さくらは最後の力を振り絞ってルーシー
の左目を斬りつけた。ルーシーが左目を抑えて悲鳴を上げている隙にさくらは自分の腹に刺さっている槍
を抜くと、フルパワーでその場から逃亡した。だが、重傷を負っている体で全力で高速移動魔法を使った
ため、離脱には成功したものの出血多量で意識を失ってしまった。未開の辺境の世界のために、そのまま
誰にも発見されずに死んでしまうところだったが、ちょうど運よく自然保護隊のエリオ・モンディアルと
キャロ・ル・ルシエがこの世界の希少動物の観察に訪れていて倒れているさくらを発見して保護した。フ
ェイトからさくらのことを聞かされていた二人は、さくらを病院に運ぶとすぐにフェイトに知らせた。
クロノに呼ばれて本局に戻っていたフェイトは、すぐに病院に駆け付けた。医師から一命を取り留めた
と聞かされ安堵するフェイトだが、新しい任務の打ち合わせのために離れなければならなかった。その間
に、さくらは目を覚ました。
第9話【動き出した策謀】
ロストロギア『ディアス』。人を自由に操ることができるとされる結晶体で、ある集団がそれを収集し
ていた。その集団とは武装宗教団体フォーサイズ。教祖の命令は絶対で、その命令の遂行のためには命も
惜しまない狂信者の集団である。その詳しい内部事情はまったくの謎だったが、地道な捜査の末に数年前
にできた新興の宗教団体レッドコメットがフォーサイズと関係しているらしいとわかって潜入捜査を行っ
ていたが、潜入した捜査官はすべて死体で発見された。何回か強制捜査も行われたが、捜査員殺害の証拠
になる物やフォーサイズとの関係を示す物は発見されなかった。厄介なのはレッドコメットが慈善事業な
どで市民に好かれていることで、確たる証拠もなしに強制捜査をした管理局には市民からの批難が殺到し
たのである。以後、管理局はレッドコメットに手が出しにくい状況となってしまった。
だが、管理局が睨んだとおり、レッドコメットとフォーサイズは同じ組織だった。フォーサイズの教祖
ダニエル・ジャッカルはレッドコメットの教祖ギルバート・ミハイルであり、ミハイルは信者を洗脳して
死をも恐れぬ兵士として訓練していたのだ。そのミハイルの野望は次元世界の支配者として君臨すること
であり、そのためにディアスを集めさせていたのだが、ディアス1個で操れる人間はせいぜい2、3人ぐ
らいでしか無く、次元世界全体の人間を操るには42個すべてを集めなければならず、ミハイルの手元に
はまだ6個しかなかった。焦るミハイルに側近がゼクエスの帝王候補が現れたと告げた。一瞬、何のこと
かわからなかったミハイルだったが、が、すぐにそれがかつて聞いたことがある伝説と知ると帝王候補の
捕獲を命じた。全世界に君臨するとされるゼクエスの帝王候補をディアスで洗脳して帝王にしてしまえば
ミハイルは帝王を陰で操る真の支配者となることができる。そっちの方がディアスを時間と苦労をかけて
全部集めるよりも手っ取り早くてすむ。
その帝王候補の一人であるさくらは病院のベッドで意識を取り戻したものの、まだ安静が必要な容体だ
った。目が覚めたら全然知らない部屋だったため、さくらはしばらくボーっと天井を眺めていたが、自分
が危うく死にかけたのを思い出すと体を震わせた。さらに起きたら全然知らない部屋だったことも、さら
にデバイスが無いこともさくらの恐怖心を煽った。そこへ、彼女の治療を担当した女医と勝手にさくらの
デバイスを持ち去って調べていたシャリオ・フィニーノが入ってくると、さくらはシャーリーの意思を支
配してデバイスを取り戻して変身した。まだ傷が完治しておらず動いてはいけない体なのだが、さくらは
正常な判断が下せる状態ではなかった。病院を文字通り飛び出したさくらだが、周りは見たことのない風
景ばかりで帰り道すらわからなかった。ますます、錯乱するさくらを通報を受けて急いで駆けつけたフェ
イトが落ち着かせようとするが、さくらは彼女の意思を支配しようとする。だが、S+ランクのフェイト
にはその魔法は通用しない。フェイトに襲いかかるさくら。フェイトは止む無く応戦するも、すでに幾度
かの実戦を経験して戦い方を学んださくらに苦戦を強いられる。だが、無理して体を動かしたためさくら
の腹の傷口が開いてしまった。さくらが怯んだ隙にフェイトは彼女を捕まえることに成功する。暴れるさ
くらをフェイトは優しく抱擁した。さくらはようやく落ち着いたのだった。
第10話【宣戦布告】
さくらはすぐさま病院で手術された。手術は成功したが、しばらくは入院が必要となった。また、知ら
ない場所での安静を余儀なくされるさくらの不安を感じたフェイトはなるべく側にいるようにするが、新
しい任務が決まった彼女にはそんな時間の余裕がなかった。せめて寂しくないようにとフェイトはぬいぐ
るみをプレゼントするが、さくらはそれを受け取ると家族のことを思い出して泣きだしてしまった。不安
と寂しさがいまのさくらのすべてだった。そんなさくらをフェイトは優しく慰めるのだった。
フェイトの新しい任務。それは増強された対フォーサイズ捜査班への参加だった。はやてが班長となり、
フェイトの他にも助手のティアナやシャーリーに、教導隊からなのはも参加することになった。トップエ
ースのなのはが参加するということは、それだけフォーサイズが危険な集団ということである。
一方、ルーシーは自分が戦う理由に疑問を感じ始めていた。いや、疑問は最初から抱いていた。それを、
次元世界を自分が支配して争いを無くすという思いで無理矢理抑えていただけだ。だが、初めて自分が傷
を負わされて、他人を犠牲にしてまで達成しなければならない物なんてあるかどうかという疑問が生じた
のだ。自分が支配者となって争いを無くすなんて、それはただのエゴにすぎないのではないだろうか。思
い悩んだルーシーはさくらに会いたいと思った。会って詫びたいと思った。無論、さくらは許さないだろ
う。それでも、ルーシーはさくらに会って謝りたいと思ったのだ。だが、すでに彼女はフォーサイズの兵
士たちに狙われていた。数十人の兵士に囲まれたルーシーはその異様な感じから、彼らが強力なマインド
コントロールにかけられていることを見抜き試しに一人を血祭りにあげた。仲間がやられているのに、彼
らは顔色一つ変えなかった。やられている本人でさえ自分がどんな目に遭ったかわかっていないようだっ
た。彼らは痛みも恐怖も持ち合わせていないのだ。そういった連中を退けるには確実に息の根を止める必
要がある。それ自体はルーシーには難しいことではない。だが、連中はただの捨石だった。ルーシーが彼
らと戦っている時に見せたわずかな隙を突いて隠れていた指揮官の魔導師が、彼女の左側から攻撃を仕掛
けてきたのである。以前のルーシーなら隙を突かれて相手に接近されても対処できたが、左目を失ってい
るため左側が死角になっていたので反応が遅れてしまった。HIディフェンスを張る間もなく、ルーシー
は魔導師の魔力斬撃で気絶させられてしまった。ルーシーを気絶させたバレル・マックスウェルは彼女を
抱えると部下たちに引き上げを命じた。
ルーシーを手に入れたミハイルは早速ディアスで彼女の洗脳を試みた。さすがに帝王候補というだけあ
って、1個だけではルーシーには効果が無かった。それならばと、ミハイルはいままで集めた6個を一つ
にまとめて使うことにした。だが、ディアスは中途半端に融合させると二度と他のディアスとは融合しな
い性質を持っている。つまり、ここで融合させてしまえば残りの36個のディアスとは融合できなくなり、
次元世界のすべての人間を意のままにするというミハイルの野望は達成されなくなるのだ。とはいっても、
ミハイルはすでに収集するのに時間と手間のかかるディアスに見切りをつけており、それよりもゼクエス
の帝王候補を洗脳して帝王としその黒幕として陰から世界を支配することにしていた。さしもの帝王候補
も6個分のディアスには抗しきれず、ルーシーはミハイルの意のままに動く人形となってしまった。
そのころ、フェイトはフォーサイズの捜査を進めていたが、ピタッとフォーサイズの活動がストップし
たことに不審を感じていた。あれだけ精力的にディアスを捜していたのに、どういうわけかここ数日まっ
たく姿を確認できないのだ。一体、彼らはどうしたのか。その答えはすぐに出た。フォーサイズのリーダ
ー・ダニエル・ジャッカルが時空管理局に宣戦を布告してきたのだ。
第11話【黒き太陽輝く刻】
宣戦布告と同時にフォーサイズによる時空管理局地上本部への攻撃が開始された。その中には洗脳され
たルーシーの姿もあった。フォーサイズがここを最初の襲撃地点に選んだのは、もう一人の帝王候補であ
るさくらがここの医務室に入院しているとの情報を得たからである。ルーシーの襲撃を恐れるさくらのた
めにフェイトがここなら安心と転院させていたのだ。襲撃を知ったさくらは見舞いに訪れていたエリオと
キャロと担当女医とともに避難することになったが、突然女医がエリオとキャロに不意打ちを食らわせて
気絶させてしまった。実は女医はミハイルの側近の一人・シャロン・グラディスで、さくらが地上本部の
医務室にいることをミハイルに通報したのも彼女だった。シャロンはさくらを捕まえると、ルーシーの前
まで連行した。さくらに最後の決闘を申し込むルーシー。だが、さくらは完全に怖気づいていた。構わず
ルーシーは槍の斧の部分をさくらの頭上めがけて振り下ろした。間一髪、急行してきたフェイトが攻撃を
防いだ。なのはたちも駆けつけて防衛戦に参加した。フェイトはルーシーに戦うのを止めるよう説得する
が、それを空間モニターのダニエル・ジャッカルが嘲笑した。ディアスを使ってルーシーを洗脳したとい
うジャッカルにフェイトは怒りを露わにする。しかし、ジャッカルはまったく動じることなく、ルーシー
に邪魔者をすべて排除するよう命じた。命令どおり攻撃をしかけてくるルーシーにフェイトはなのはと二
人がかりで対抗するが、S+ランクの魔導師二人でもやっと互角に戦えるという状態だった。だが、ルー
シーには左に死角がある。歴戦の二人にその死角を突いて攻撃するのは難しいことではない。そこに、バ
レルが介入してきてなのはとフェイトの連携を崩した。ルーシーと1対1の対決となったなのはは、HI
ディフェンスにすべての攻撃を防がれて苦戦を強いられる。フェイトもバレルの透明化能力と遠隔操作式
攻撃端末による攻撃で翻弄されていて、なのはの援護には回れなかった。ティアナもジャッカルの側近の
一人・サラと戦闘中で援護には向かえない。
目の前の戦闘を震えながら眺めていたさくらは、苦戦しつつも戦うなのはたちの姿に幼き頃に母から言
われたことを思い出していた。さくらの母も剣道をやっていて、さくらが剣道を始めたのも母の影響から
だった。ある日、母は訊いた。どうして、強くなりたいのか、と。さくらは答えた。正義の味方になって
悪者をやっつけたい、と。いま思えば赤面したくなる返答だったが、その後に母はこう言った。本当の強
さとは、誰かを倒すとかいうためではなく、誰かを守るためにあるべきものだと。その時はいまひとつ理
解できなかったが、いまならわかる気がした。なのはたちは、誰かを守るために戦っているのだ。それは、
大好きだった母に教えられたことと一致していた。そんな母が、娘が他人を犠牲にして自分を生き返らせ
たとしても喜ぶわけがない。そして、病院でフェイトから教えられたなぜ言葉があるのかという事。さく
らは自分が過ちを犯していたことを悟った。もう少しで、母親を裏切るところだった。それを償うため、
さくらは再び武器を取り立ちあがった。
第12話【星の光に祈りを込めて】
地上本部に対するフォーサイズの攻撃は苛烈を極めた。痛みも死への恐怖もない彼らは倒されても倒さ
れても起き上がってきた。時空管理局地上部隊は必死に防戦するが、フォーサイズが自爆攻撃を仕掛けて
くると、恐怖のあまり持ち場を逃げ出す者が出始めた。また、管理局は軍隊ではないため相手を生け捕り
にすることが求められていたが、動ける限りは戦うを止めようとしない狂信的なフォーサイズの兵に対す
る恐怖心から攻撃が過剰になってしまうこともあった。はやてが現場の総指揮を執って懸命に統制を保と
うとするが、防衛線の崩壊は時間の問題となりつつあった。
一方、誰かを倒すためではなく、誰かを守るために戦うことを決意したさくらはルーシーに戦いを止め
るよう説得した。無論、洗脳されているルーシーが応えるわけはないのだが、さくらはルーシーの攻撃を
受けながらもなお説得を試みた。それは傍目から見たら無駄な努力かもしれない。しかし、さくらにはわ
かっていた。ルーシーにも何か守りたいものがあるのだと。自分たちは世界で二人だけのゼクエスの帝王
候補だ。他者に操られるままで終わるわけがない。さくらは武器を置いて両腕を左右に広げ、ルーシーに
叫んだ。貴方を信じると。その思いも空しく、さくらはルーシーに槍で貫かれるが、その感触がルーシー
に戸惑いを感じさせた。それを見たさくらは息が苦しいながらもルーシーを諭した。人を傷つけるってこ
んなに嫌なものなのだと。そして、自分で槍を抜くとその穂先を自分の喉元に向けた。それまで二人の戦
いを黙って見守っていたなのはが、あわてて止めに入ろうとするがさくらはそれを制止した。ルーシーが
見せた戸惑いに賭けてみることにしたのだ。そのさくらの思いに応えるかのように、ルーシーは震えるば
かりでさくらの喉を突こうとはしない。ジャッカルが執拗に殺せと命令しても、さくらの喉元からわずか
数センチまで迫っている槍がそれ以上前に進むことはなかった。なかなかさくらを殺そうとしないルーシ
ーに業を煮やしたジャッカルは、彼女を洗脳していたディアスを直接体に埋め込むことで完全にルーシー
を制御下に置こうと、ディアスをルーシーの体内に転送させるが、それがなのはに彼女を解放する手段を
与えることになった。かつて、娘に移植されたロストロギア・レリックを破壊したように、なのははスタ
ーライトブレイカーex-fbでルーシーの体内のディアスを破壊しようというのだ。たとえ、スターライト
ブレイカーであってもHIディフェンスの前には無力なのだが、いまのルーシーはディアスによる侵蝕が
進行中で無防備な状態にある。ディアスが完全にルーシーを支配する前に、なのははスターライトブレイ
カーを放ち、ルーシーを蝕んでいたディアスを破壊することに成功した。それと時を同じくして、フェイ
トも相手の動きを読むことでバレルを倒し、ティアナもサラとの射撃合戦に勝利を収めていた。
切り札を失ったジャッカルは、管理局の降伏勧告を拒否して最後の手段に出た。レッドコメットの本部
の地下に隠してあった巨大空中戦艦を稼働させたのだ。なのはとフェイトは意識を失ったさくらとルーシ
ーをティアナに任せると空中戦艦への突入を試みるのだった。
第13話【You are my friend】
空中戦艦への接触を図るなのはとフェイトを無数の航空兵器シャムが迎撃した。二人はシャムを次々に
撃墜するが、シャムは戦艦から大量に射出されてきてキリがない。さらに戦艦から地上にも20機ほどの
地上用兵器デストロイヤーが降下して、2丁の熱線銃と全方位型偏向シールドを駆使して管理局側を追い
詰めていった。そこへ、シグナム・ヴィータ・シャマル・ザフィーラと十数人の航空魔導師が駆けつけ、
シグナム・シャマル・ザフィーラが地上の支援に向かい、ヴィータと航空魔導師隊がなのはとフェイトの
突入を援護した。
戦艦の内部に侵入した二人をデストロイヤーが迎撃するが、なのははそれらをエクセリオンバスターで
一掃する。だが、デストロイヤーは次々に現れてくる。外でもシャムが墜とされても墜とされても戦艦か
ら新手が飛来してきた。二人は戦艦内部に兵器工場があると判断して、なのはが兵器工場を破壊し、フェ
イトがジャッカルを捜索してこれを拘束することにした。だが、ジャッカルはすでに敗北を悟っており、
戦艦を地上本部に墜落させるつもりでいた。本人はその前に脱出するつもりでいたが、フォーサイズもレ
ッドコメットも今回の件で壊滅状態となっている。それでも、ジャッカルは自分さえ生き残ればいつでも
新たなる組織を立ち上げられると楽観していたのだが、脱出艇に向かう途中でフェイトに出くわしてしま
い逮捕された。なのはも兵器工場を発見して破壊に成功、ついでに兵器の制御装置も破壊したため稼働中
のシャムとデストロイヤーはすべて機能を停止した。これで一件落着かと思われたが、空中戦艦は地上本
部に向かって降下中であり、動力部を破壊しても地上本部への墜落は不可避の状況となっていた。ただち
に避難が命令されたが、負傷して動けない者もいてとても全員避難できそうになかった。ティアナはスタ
ーライトブレイカーで戦艦を破壊することにした。彼女だけの魔力ではなのはのスターライトブレイカー
には到底及ばないが、意識を取り戻したルーシーが魔力を提供してくれたので本家を上回る威力が出せる
ようになった。なのはとフェイトも可能な限り内部から破壊してから脱出し、それを確認したティアナが
スターライトブレイカーを放って戦艦を破壊した。
事件解決から数日後、時空管理局病院に入院しているさくらをルーシーが見舞いに訪れた。洗脳されて
いたので事件の罪を問われずに済んだのだ。謝罪したいというルーシーにさくらも左目を傷つけたことを
謝った。お互いがお互いを許すという形で二人は和解し、さくらが友達になりたいと言うとルーシーはそ
れを快諾するのだった。二人は神官と魔女に帝王にならないことを告げ、神官たちも最終的には当人らの
意思次第として認めることにした。二人はゼクエスの力を封印し、新たな道を歩むことになった。ルーシ
ーは執務官を目指し、さくらはフェイトが身元引受人になってくれたのでフェイトに引き取られることに
なった。
1ヶ月後、魔法学校で机を並べて勉強するさくらとルーシーの姿が見られた。
ちょっと前回の設定とは違ったストーリーとなってしまいました。いつか小説編で本格的にやりたいと
思っていますが、その時はまた違った内容になる気がします。
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