ショッカーとゲルショッカー
ショッカーは結成から仮面ライダーとの戦いまでの期間が長かったためか、大首領が組織した秘密結社ではもっとも
規模の大きな組織でした。戦闘員の種類も赤と黒という二系統がありました。後の組織にも親衛隊とか秘密警察といっ
た通常と異なる戦闘員が登場したことはありますが、ショッカーの戦闘員ほど明確には分かれていなかったのではない
でしょうか(ドグマの親衛隊は少数なので除外)。
そのショッカー戦闘員ですが、時期によってベレー帽・覆面・覆面+骨模様の戦闘服の3つに分かれます。どうして
ベレー帽が廃止されたかというと、同じ人が何回も戦闘員を演じるという不自然さを隠すためだそうですが、それは製
作サイドの都合なので置いといて、仮面ライダーという強敵に対抗するために日本支部が独自に戦闘員を強化して区別
するために覆面に変更したと推測します。日本支部が独自にというのは日本で覆面戦闘員が登場したときにメキシコ支
部はベレー帽だったからです。強敵がいない海外の支部では初期型の戦闘員でも問題なかったからでしょう。それも随
時覆面に変更されていきますが。
ベレー帽から覆面に変わっても黒と赤の二種類の戦闘員がいるという状態はしばらく続きました。しかし、それも死
神博士が日本支部に着任したぐらいから赤が次第に淘汰されていくようになり、骨模様の戦闘員が登場すると日本支部
では赤の戦闘員が見られなくなりました(海外の支部では赤の骨戦闘員も見られる)。
さて、長い年月をかけて規模を大きくしたショッカーですが、その前に立ちはだかる強敵が現れました。仮面ライダ
ーです。自分たちが生み出したこの強敵にショッカーの作戦はことごとく妨害され、多数の改造人間と戦闘員が命を奪
われました。さらには、仮面ライダーを倒すために製作した新しい仮面ライダーまでもが裏切って敵対するという非常
事態となってしまいます。こうした事態にショッカーは日本支部を強化することにして、中東からゾル大佐を呼び寄せ
て日本支部の指揮を執らせました。しかし、中東で勇名を馳せたゾル大佐も仮面ライダーの前に失態を繰り返した挙句
にライダーパンチで戦場の露となりました。
ゾル大佐の戦死でショッカー首領は最高幹部の死神博士を日本に招聘することを決意します。自身が改造手術に携わ
っていたこともあって、死神博士配下の改造人間はライダーの力を上回る者が多くいました。ところが、ライダーを二
人製作してそのどちらも敵となる失態の影響がここで現れることになります。日本で苦戦するライダー2号を救援する
ために1号が帰国したのです。死神博士自慢の改造人間たちも仮面ライダー二人がかりでは歯が立ちません。とうとう
死神博士は日本支部長の職を解かれました。更迭だけですんだのは後任の地獄大使に首領が不安を抱いたからだと思い
ます。というのも、地獄大使は直情的なところがあり詰めの甘さが欠点だからです。地獄大使が失敗した場合の保険と
して首領は死神博士を処刑しなかったと思います。しかし、死神博士は赴任先である南米にもライダー2号という強敵
がいるにも関わらず何回か日本に来て挙句の果てに1号に倒されてしまいました。一度更迭した幹部が日本に来るのを
許したのも、首領が地獄大使に絶対的な信頼を抱いていないからではないでしょうか。無論、地獄大使はその忠誠心と
多大な功績で最高幹部に抜擢された優秀な人材ですが、仮面ライダーという強敵を前にした場合に先述した性格的な問
題が不安材料になったと思います。
地獄大使が駄目ならもう一度死神博士にやらせてみよう。首領はそう考えたと思います。しかし、死神博士が殺され
たことで地獄大使に代わる人材がなくなってしまいました。どんなに地獄大使が作戦に失敗したとしても、首領は彼を
更迭も左遷もできません。ショッカーにはもう彼の後釜に据えられる人材がいないのですから。ここに至り、首領は非
情な決断を下したのでした。
首領が下した決断。それはショッカーを見限り新たな組織を立ち上げることでした。そして、首領が目をつけたのが
ゲルダム団です。首領とゲルダムがいつ知り合ったかは定かではありませんが、最高幹部である地獄大使ですらその存
在を知らされてなかったとすれば、そう昔のことではないかもしれません。なぜならショッカー結成以前に関わりがあ
ったならショッカーに編入されていただろうし、何らかの事情で袂をわかったとしてもそれぐらいの事を地獄大使に秘
密にする必要はないからです。つまり、首領がゲルダムと接触したのはショッカーでは仮面ライダーに対抗することが
出来ない事が明らかになりつつあった死神博士の戦死後ではなかったでしょうか。
では、ゲルダム団とはどういう集団なのでしょう。アフリカ奥地で訓練していたそうなので、現地部族の一派でしょ
うか。大幹部のブラック将軍が帝政ロシアの将軍だったそうなので、祖国を追われてアフリカに逃れてきたロシア帝国
の残党の子孫がゲルダム団なのかもしれません。ともかく、死神博士の戦死でショッカーに見切りをつけた首領は、そ
れに替わる組織を作ることにしました。とはいえ、一から作ったのでは時間がかかりすぎます。既存の秘密結社で一般
には勿論のことその他の秘密結社にも存在を知られていない組織を勧誘しようとしたでしょう。それで条件が一致した
のがゲルダム団です。
首領とゲルダム団がどういう交渉をしたかはわかりませんが、彼らはショッカーという別組織の首領を自分たちの首
領とすることに同意しました。しかし、アフリカで細々と暮らしていた彼らにショッカーに取って代わる力はありませ
ん。そこで首領はショッカーの中で優秀な人材を極秘任務という名目で組織から抜け出させ、ゲルダム団に合流させる
ことでショッカーに替わる組織にしようとしたのではないでしょうか。これがゲルショッカーの原形になったと思いま
す。首領は引き続き地獄大使にショッカーの指揮を執らせる一方で、ゲルショッカーにはショッカーを上回る改造人間
と戦闘員の研究を命じます。そして、人間に二種類の動植物の能力を移植することで従来を上回る能力を得た改造人間
が誕生しました。多分、首領はその改造人間とショッカーの改造人間を戦わせて能力テストをしたと思われます。その
結果、ショッカーの改造人間を圧倒する能力を見せた新型の改造人間に首領はショッカーの放棄を決断するに至りまし
た。首領は地獄大使に最高幹部の彼ですら知らない改造人間のガニコウモルを見せます。自分が知らない改造人間に地
獄大使は首領に詰問しますが、首領は何も答えません。ここでようやく地獄大使は首領の真意に気づいたのです。しか
し、まさか首領がショッカーそのものを見捨てようとは思っていないであろう地獄大使は自分だけが見限られたと勘違
いしたのではないでしょうか。追い詰められた地獄大使はある決意を固めるのでした。
着々とゲルショッカーの準備が整いつつある中、首領にガラガランダから最高機密である毒水道作戦が仮面ライダー
に筒抜けになっていたという報告を受けました。首領は作戦が自分と最高幹部の地獄大使しか知らないことから、地獄
大使が裏切って仮面ライダーに通報したと断じました。ガラガランダも地獄大使が怪しいと思ったから直属の上司では
なく、直接首領に報告したのでしょう。と、言いたいところですが、ガラガランダは地獄大使の変身体です。首領もそ
のことを知っていたはずです。そこから仮面ライダーを罠に嵌めるための仕組まれた陰謀ではないかと推測も成り立ち
ますが、それなら地獄大使が裏切りを糾弾されて捕縛されるシーンは必要ないはずです。仮面ライダーが見ていないと
ころでそんな小芝居しても意味ないでしょう。
そこで想像するに地獄大使は当初からガラガランダだったわけではなかったのでは?彼がガラガランダに改造された
のは首領にガニコウモルを見せられた後と推測すれば・・・・・・。自分が知らない改造人間の存在を知った地獄大使はこれ
を自分に対する最後通牒と考えました。ただ一人の最高幹部である地獄大使の後釜になるのは彼より格下だった者の筈
です。プライドが高い人物であればこれは耐えられない屈辱です。それならば死を賭して仮面ライダーに乾坤一擲の勝
負を挑もうと考えたのでしょう。彼は首領にも極秘に自分を改造させて、一部の戦闘員にのみ作戦を伝えてショッカー
を裏切るふりをしました。首領も途中で地獄大使の真意に気づいたと思います。もしも、それで地獄大使が仮面ライダ
ーを倒すことが出来たなら、彼を新組織ゲルショッカーの大幹部に迎え入れるぐらいは考えていたことでしょう。しか
し、奮戦空しく地獄大使はライダーキックに敗れショッカーを賛美しつつ爆死しました。最後までショッカーへの忠節
を見せた地獄大使ですが、それに対する首領の反応は冷淡なものでした。彼は躊躇なくショッカーのアジトを自爆させ
て仮面ライダーに新たなる組織の存在を告げたのです。
首領のショッカー放棄で用済みとなったショッカー構成員を始末したゲルショッカーはブラック将軍を日本に招いて
仮面ライダーに攻勢を仕掛けます。二種類の動植物を合成させたゲルショッカーの改造人間はショッカーの改造人間よ
りも強力で、仮面ライダーは幾度も危機に陥りました。しかし、その度に仮面ライダーは危機を切り抜けてゲルショッ
カーの野望を挫いていきます。ショッカーと違って準備期間の短いゲルショッカーには改造人間がそうそういるわけで
はありませんから、ショッカーみたいに次がんばればいいやとかいう気持ちではすぐに改造人間がいなくなってしまい
ます。そこでゲルショッカーは起死回生として仮面ライダーと同じ能力のショッカーライダーを製造します。しかも、
6体という大量生産です。ところが、1対1では互角だったショッカーライダーが6人になると弱くなってしまったで
はありませんか。おまけに最後は6人まとめて倒されるという再生怪人なみの扱いです。原爆の直撃にも耐えられるダ
ブルライダーと同等な筈のショッカーライダーが、空中衝突したぐらいで爆発するのはなぜなんでしょう。ライダーが
空中体当たりで敵を倒しても重傷を負うぐらいで済むのに・・・。やはり、ライダー曰く「所詮はニセモノ」というこ
となんでしょうか。しかし、仮面ライダーもショッカーの改造人間です。なのにショッカーよりも科学が進歩したはず
のゲルショッカーが仮面ライダーの粗悪なコピー品しか作れないのはどういうことか。粗製乱造しかできない技術力な
のでしょうか。仮面ライダーのシリーズを通じて怪人軍団にライダーが圧倒されるのは皆無なのではないでしょうか。
逆に複数のライダーによって改造人間がリンチにあうのはよく見かけられます。
それはさておき、ゲルショッカーも仮面ライダーに歯が立たないことが明らかになりつつあった時の首領の心中はど
うだったでしょう。もう、この時点で彼はゲルショッカーにも見切りをつけたと思います。ブラック将軍が自らを犠牲
にして立てた最後の作戦も、ライダーを誘き寄せている間に仲間をさらうという何のひねりもないものである上にライ
ダーを迎え撃つのが再生怪人という戦闘員よりはマシな程度の連中だったために、その犠牲もまったくの無駄に終わっ
てしまった何とも救いの無い結果になってしまいました。彼の変身体であるヒルカメレオンの奮戦が滅び行く組織のせ
めてもの慰めです。ブラック将軍と怪人軍団が全滅した後に首領はライダーたちの前に姿を現します。ダブルライダー
は首領を追い詰めてその正体を暴きますが、彼等が見たのは大きな一つ目の怪人でした。首領はゲルショッカーの最期
を宣言して自爆して果てますが、それはライダーの目を誤魔化すための芝居でした。彼はすでに新たなる組織の結成に
動いていたのです。だからこそ、あれほど簡単に自爆という手段をとったのだと思います。首領の姿を知らないライダ
ーはそれに騙されて、首領にデストロンを組織させる余裕を与えてしまった。首領が最後まで姿を現さないのは、こう
いう時のためではないのでしょうか。無論、それだけではないんでしょうがね。
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