『SIDE STORY1』
とある場所。あっちこっちで木が倒れてたり地面に穴が掘られていることから戦闘らしき事が行われていたことが窺われる。そのような場所で一人の少女が人間の腕らしきものをバクバクむしゃぶりつくように食べている。見た目の年齢は10代前半といったところか。教会のシスターのような恰好をしているが、彼女はシスターではない。それどころか人間ですらなかった。
「……よく喰えるものね」
いつの間にか少女の近くに女が立っていた。20代くらいといったところか、彼女も人間でない事はとがった耳や悪魔みたいな羽や尻尾でわかる。
「あなたが食べているソレ、あなたの契約者でしょ?そんな人の肉まで食べるなんて相変わらずの食欲ね」
「えっへん」
「ほめてないわよ。呆れてるだけ」
「ぷぅっベルトーチカのいじわるぅ」
少女は頬を膨らませてむくれた。
「それで、次はどうするの?新しい契約者の目星はついてる?」
「ううん、まだ。そっちは?」
「一ヶ月くらい前だったかしら。契約したわよ」
「ふーん。私も早く探さなきゃ」
「あなたに狙われる人間に同情を禁じ得ないわ。下手すれば食べられてしまうんだから」
「いいじゃない。死んじゃったんだから。こんなところで死んだら鳥や獣に食べられるんだから私が食べてもいいじゃない」
「まあいいけどね。で、満腹になった?」
「うん!」
少女は満面の笑みを浮かべた。その足元には骨だけになった人間の遺体。
「そりゃ、そうよね。その人間とそいつが倒した闇の連中の死体も全部食ったんだから」
この場所には人間以外にも明らかに人間のものではない死体がいくつか転がっていて、そのどれもが骨だけになっていた。
「えっへん」
胸を張る少女に女は呆れ顔で、
「だから褒めてないわよ」
少女が空腹のときは絶対に近づかない事にしている女だった。