『FESTIVE RED RICE』

みちるから連絡があった。

『プールに来ない?』
 プールか…暑くなってきたし、ちょうどいい季節だと思う。でも、“来ない?”ってどういう意味だ?“行かない?”だろ、普通。そういや、前にもシスターにせがまれてプールに行った事があったな。あの時は(“も”の方が正しい気が…)、みちるに殴り飛ばされて散々な目に遭った。シスターは今日は姉さんに連れられて外出している。僕と行く時よりもたくさん食べさせてもらえるからだ。

「どうしようかな…」
『何よ、何か用事あるの?』
 特には無いけどね。実は姉さんとシスターが出かける際にも一緒に来ないかって誘われたんだけど、なんだか体の調子がよくないから断っていた。

「お腹が痛い……」
 僕としては偽り無く言ったつもりだった。

『もう!そんな言い訳が通用するのは小学校までよ!いまから30分以内にあたしの家に来なさい!いいわね?』
 仮病使ってるとでも思ったのだろうか。ちょっとイラッとする。

「……わかった」
『じゃ、待ってるから。早く来てね、オーヴァー♪』
 電話が切られた。相変わらず強引なんだから。そう、みちるはいつも強引だ。こちらの都合も確認はしてくれるが、大した都合じゃないと無理矢理連れて行こうとする。早とちりも珍しくない。だから、普段はみちるの言動にイラッとはしない。それなのに今日はなんで…。

「多分、腹痛のうえに頭痛もあるからだな」
 この時はまだ事態を深刻には受け止めていなかった。

「さて、水着を用意しないとな」
 去年、買ったのがあったな。レジャープールで買った。あれ以来、プールにも海にも行っていない。水着を出して袋に入れて、さあ出かけよう。なんかダルいけど、命に関わるとあっては行くしかない。

「あ、そういやみちるの家に行ったことが無いよ」
 連絡網に書いてなかったかな?みちるには訊けないしな。多分、何回か行った事があるんだろうし。えと、連絡網は…あった。どれどれ。この住所をスマホに入力して、と。これでみちるの家までのルートが表示された。これで行ける。

 −−−−−−

 みちるの家はちょっと大きな一軒家だった。庭も広いね。本人は語らないが友達からの情報ではちょっとしたお嬢様らしい。成績も体育はもちろん机上の学問も学年上位に位置している。赤組に入れるレベルなんだが、僕らと同じ一般の緑組に在籍している。前に“なんで?”と訊いたら“あなたと一緒にいたかったから”と言われ照れてしまった事がある。モテる男は辛いね。女だけど……。
 ドアホンの呼び出しボタンを押す。少しして、みちるが応対した。

『いらっしゃい。開いてるから入って』
 お邪魔しまーす。ドアを開けて玄関に入る。みちるがすぐに出迎えてくれたが、なんと彼女は家の中にも関わらずすでに水着を着用していた。気が早いにもほどがある。

「どうしたの?その格好」
「プールに入るためじゃない。まさか裸で入るわけにはいかないでしょ」
 いや、だからって…そうか、まだその上に上着とかスカートが着くんだな。

「いいから入って。用意してあるから」
 用意?何のことかわからぬまま家の中を案内される。

「ここよ」
 案内されたのは姫前家の裏庭。

「プールってこれ?」
 僕は庭に置いてある子供用のビニールプールを指差した。

「そう、それ」
「……」
 頭痛がひどくなった気がする。

「物置から出てきたのよ。昔はこれであたしとあんたと渚とで遊んでたよね」
 なぎさ?なぎさって誰?クラスメートにも他のクラスにもそういう名前の娘はいない。

「元気にしてるかな…渚」
 遠くをみつめるみちる。その渚という娘とはずいぶん会ってないみたいだ。このプールで遊んでたくらいだからかなり小っこい頃の友達だったようだ。しかし、子供とはいえ女の子二人と一緒にプールに入れるなんて当時の僕はモッテモテだったんだな。その渚という娘がどうなったか気になるが、多分どっかに引っ越してしまったんだろう。

「さ、入りましょ。狭いから泳げないけどしょうがないわよね」
 入るってマジで?

「どうしたの?」
「いや、僕らいい歳だしさ……ちょっと恥ずかしいかなって」
「そうね…確かに高校生が一人で入ってたら誰が見ても痛いわよね。だから、あんたを呼んだのよ」
 え?

「だったら普通にプールに行ったら良かったんじゃ…」
「勿論、それも考えたわよ。でもね、せっかく永い眠りから覚めてお日様にお目見えしたんだからこのまま使わずに封印するのもかわいそうでしょ」
 物にそんな優しさがあるんなら、どうして人間にもっと優しくできないのだろうか。

「さ、早く着替えてきて」
「う、うん……」
 しょうがないので僕は着替える事にした。お腹が痛いのに水に入っていいのだろうかとも思うが死にはしないだろう。外からの視線があるので奥に引っ込んで着替える。リビングだけど家の中には僕ら以外にいないようだから、着ている服を全部脱ぎ捨てて裸になってから鞄から水着を取り出した。その時だった。

「ふぁあああっよく寝た」
 と大きく欠伸しながら男の人が出てきた。男は僕を見るなり動きを停止させた。僕もフリーズしてしまっている。手に持っていた水着がパサッと落ちる。

「い、いや、これは、その……」
 男はあたふたと言い訳を始めたが、僕は裸を見られた恥ずかしさに頭がオーバーヒートを起こしてしまった。

「うああああああっ!!」
 叫ぶと同時に僕は飛び上がって男の顔面に蹴りを入れた。

「ぐはっ」
 倒れた男の上に乗っかって顔面をなぐりつける。

「ま、待って、ごはっ、は、話を、げふっ」
 問答無用に殴り続ける。そこに騒ぎを聞きつけたみちるが駆けつけた。

「ど、どうしたの?って、なにやってんのよ!?」
 状況を見るやみちるは僕を羽交い絞めにした。

「なにがあったの!?」
「裸、裸を見られた!」
「とにかく落ち着きなさい!」
「だって、だって、裸を見られた。男の人に裸を見られた!」
「わかったから落ち着いて!」
「嫌だ!このままじゃ僕はお嫁に行けなくなっちゃう!」
「殴り殺してもお嫁に行けなくなっちゃうわよ!とにかく離れなさい!」
 みちるは僕を男から引き離した。

「この娘はあたしが押さえつけているからお兄ちゃんはバスタオル持ってきて!」
「お、おう」
 男は一目散に立ち去って行った。って、お兄ちゃん!?

 −−−−−−

 数分後、落ち着いた僕はみちるのお兄さんに土下座していた。

「本っ当にごめんなさい!」
「いいよ、こっちだって悪かったんだし。だから顔を上げて」
 顔がパンパンに腫れているのに恨み言を言わないなんて。みちるのお兄さんなのに優しいんだな。

「あんなところで着替えるからよ」
 もっともだ。だって、誰もいないと思ったんだよ。みちるは腕を組んで呆れたように僕を見ている。

「それにしても久しぶりだね。君が家に来るのは何年ぶりだっけ?女の子になったとは聞いたけど思った以上にかわいいね」
 そう言われて顔が赤くなる。なんでだろう?

「さ、あたしたちはこれからプールで遊ぶんだから、お兄ちゃんは上で引きこもっててよ」
「待てよ、人を引きこもりみたいに言うな」
 苦情も空しくお兄さんは妹に無理矢理に上へ追いやられていった。

「さ、入りましょ」
 すでに水は張られている。まず、みちるが先に入って次に僕がお腹を手でかばいながら入った。

「どうしたの?本当に痛いの?」
「うん……」
「無理しなくていいのよ?」
「大丈夫…だと思う」
 日頃、暴力にさらされているこの体、腹痛ごときで壊れるような柔なものではあるまい。ゆっくりと水に浸かる。しかし、これって水風呂に入ってるのと変わらないのでは?裸か水着かの違いだけだ。

「本当に大丈夫?拾い食いでもしたんじゃないの?」
「待って、なんで野良犬みたいな事をするんだよ?」
「冗談よ」
「もう」
「ごめんごめん。ところでさ、その水着って去年買った奴よね?」
「そうだよ」
「あの時はまだ男だって思ってたけど、もうすでに女になってたの?」
「う、うん……」
「そう……」
「まだ怒ってる?黙ってた事」
「あたしはそんなに根に持つ女じゃないわよ」
 そうだろうか。以前に卑劣な手段を使ってみちるを追いつめた不良がいたそうだが、みちるはいまでもその不良を見かけると半殺しにしているという噂を耳にした事がある。みちるの名の由来は血が満ちるから来ているという説もある。

「それにしてもさっきは驚いたわよ。あんたが裸でお兄ちゃんを殴りつけてたんだから」
「ご、ごめん」
 本当に申し訳ない。

「どうしたのよ?珍しいわね、あんたがあんなに取り乱すなんて」
 僕だっていまでも信じられない。裸を見られたぐらいで。元は男だったんだから男に裸を見られても平気なはずなのに…。平気ではないか。皆、やらしい目で見るんだから。

「わかんないよ。急に恥ずかしくなって恥ずかしくてたまらなくなって気づいたらお兄さんを殴ってた……」
「ふーん。まあ、お兄ちゃんも女の子の裸を見たんだから当然のペナルティよね」
「ところでさ、みちるの兄弟ってお兄さん一人だけ?」
「何言ってるの?あたしんとこは五人兄弟よ。あんた忘れたの?」
「あ…ああ、そうだった…ね」
「もう、しばらく来てなかったからしょうがないわね。いい?一番上がお姉ちゃんの“みはる”、その下がさっきのお兄ちゃんの“みつる”、んであたしで、弟に“みのる”と妹に“みくる”がいる。どう?思い出した?」
「うん、思い出した」
 そうか5人兄弟か。初めて知った。いまどき5人兄弟って珍しいな。ご両親頑張られたんだな。感心していると、みちるがぷぷっと不意に笑い出した。

「どしたの?」
「さっきのちょっと思い出しちゃって」
 さっきの?

「だって、あんた真剣な顔で“お嫁に行けなくなっちゃう”って言ってたでしょ。それがおかしくて」
 そういや、そんな事言ってたような。僕は沸騰するんじゃないかってぐらい顔が赤くなった。は、恥ずかしいぃ!お嫁に行けなくなるってどうよ!?

「あんた、お嫁に行く気あったの?」
 僕は必死に首を横に振った。無い無い絶対に無い。

「でも、あの時は本気にしか見えなかったけど?」
「もうやめてよ。自分でもなんであんな事言ったのかわかんないのに」
「我を忘れてって事?それって、本能的に女になりつつあるって事じゃないの?」
「え?」
「体つきだけじゃなくて内面的にも女になりつつあるのよ」
 そ、そうなのかな。だから、男の人に裸を見られて取り乱したのか。もう、僕は完全に男じゃなくなってしまうのか……。

「ちょっ、どうしたのよ!?」
 だって、完全に男じゃなくなるって思うと…

「だからって、泣く事ないでしょ?別に死ぬわけじゃないんだから」
「うん……」
「ほら、プールに入ってんだから楽しい事考えましょ」
 みちるの言うとおりだ。暗い事は考えないようにしよう。リラックス、リラックス〜と。ん?猫が来たぞ。

「あ、ポンペイオニクス」
 ポ、ポンペ…?知っている猫なの?

「あたしん家の飼い猫よ。かわいいでしょ」
 うん、かわいい。じゃなくて、なんとも個性的な名前をつけたもんだ。なんでもポンペイウスとコペルニクスを組み合わせたそうだ。ふうん。しかし、ビニールプールに猫か。この後の展開が読めてしまった。

「にゃー」
 僕の危惧は的中した。猫が爪でプールをガリガリしはじめたのだ。あわてて猫を抱き上げようとしたが手遅れでビニールは破けてしまった。みるみるうちにプールはしぼんでしまった。

「あ〜あ」
「ごめん…」
「あんたが謝ることじゃないでしょ。いいわ、どうせ捨てるんだし。最後の思い出をありがとうってね」
 みちるはビニールプールをたたみ始めた。

「子供の時に使っていた物もあたしたちが大きくなると使わなくなって思い出になっていく。その思い出を糧にあたしたちは大きくなるのね」
「そうだね」
 らしくないこと言うな。

「人間って変わる生き物よね。あたしもあんたもこのプールで遊んでた頃は将来がこうなるなんて考えもしなかったわよね」
 そうだろうね。多分、このプールで遊んでたのは10年くらい前だろうから、その時に自分が女になるなんて思いもしなかっただろう。多分、そう思う。思いたい。女の子なりたい願望が強すぎて現状を引き寄せたとは思いたくない。うん、大丈夫。自分は健全な子供だったと信じたい。女の子になりたいなんてまるで男が好きで男を振り向かせたいからそうなりたいみたいじゃないか。僕は女の子が好きだ。男となんて考えた事すらない。その証拠に…

「でも、どんなに年月が経過しても変わらないものだってあるよ」
「なに?それ」
「僕がみちるを大事に思う気持ちさ」
 そう、僕はみちるが好きだ。たとえ同性になっても。みちるの顔がみるみるうちに赤くなる。

「ば、ばか!からかわないでよ」
 ぷいっと横を向くみちる。しかし、これは僕の本心だ。

「あたしたちもう同性なのよ。あんまし不健全なのはダメよ」
「でも、好きなんだもん」
 僕はみちるを抱きしめた。

「ちょ、ちょっといきなり何やってんのよ!?」
「いいじゃん。女の子同士なんだから」
「いや、むしろそっちの方がダメな気も…とにかくここじゃ他人の目があるでしょ」
「だったら一緒に寝ようよ」
「はぁ!!?」
「昔は一緒にお昼寝してたんでしょ?」
「あ、ああ、そういうことね。びっくりさせないでよ」
 何をびっくりするんだ?

「変な事言うからびっくりしたじゃない。お昼寝ね。いいんじゃない?ちょっと遊び疲れたから寝ましょ」
 というわけで、僕らは着替えるとみちるのベッドで一緒に昼寝することになった。みちるのベッドはセミダブルで二人で寝ても大丈夫だった。

「なんかドキドキしてきた」
「変な事しないでよ」
「変な事?」
 はて、変な事ってなんぞや?

「…そういうのは変わってないわね」
「なに?」
「いいわ。寝よ」
 気になるな。まあいいや。おやすみなさーい。

 −−−−−−

「…起きて、ほら起きて」
 むにゃむにゃ…誰だ、僕を揺さぶってるのは。僕は目を覚ますと時計を探した。えーと…あった。

「なんだよ、まだ5時過ぎじゃないか……」
「何、寝ぼけてんのよ!朝じゃなくて夕方よ」
 なぬ、夕方?って、なんでみちるがいるの?

「バカ!ここはあたしの部屋じゃない」
 あ、そうか。みちるの家に来てるんだった。

「もう、天然なんだから。しかしよく寝てたわよ。起こすのを躊躇うぐらい」
「ご、ごめん……」
「別にいいわ。かわいい寝顔を見られたんだから」
「か、かわいい?」
 みちるから“かわいい”って初めて言われた。て、照れる。

「なに、赤くなってんのよ。もう遅いから帰った方がいいわよ。家まで送るわ」
「え、悪いよ」
「気にしない。ちょっと気になる事があるから」
 気になる事?なんだろう。こっちも気になる。でも、そろそろ姉さんたちも帰ってるだろうし、夕飯の支度もしないとね。僕は帰る事にした。みちるのお兄さんに挨拶して、みちるの家を出た。家に着くとシスターが門の前で立っていた。

「あ、帰ってきた。おーい」
 シスターは僕を見つけると大きく手を振った。僕を待っていたようだ。

「やっと帰ってきた。ねえ、早く来て」
 僕の所に駆け寄ってくるとシスターは僕の腕を引っ張って家に誘導した。

「何をそんなに急いでるの」
「いいから、早く」
 何があるんだろう。みちるも僕らについてくる。シスターは僕らを庭に連れてきた。そこにはビニールプールとその背後にどっかのビーチの写真が張り付いているでっかいパネルがあった。

「どうしたんだ?これ」
 こんなの家に無かった。と言う事は今日姉さんたちが買ってきたのか。

「あら、帰ってたの。みっちゃんもいらっしゃい」
 姉さんが現れた。

「あ、お邪魔してます」
「ゆっくりしていってね」
「姉さん、これなに?」
「あんたに海外旅行の気分を味わってほしくて買ってきたのよ」
「僕のために?」
「あんた、海外はおろか国内旅行にも行ったことが無いでしょ。だから、せめて気分だけでもね」
「でも、ゆうかさん、このパネルだけじゃ……」
「みっちゃん、私がこれだけで済ませると思っているの?シスターちゃん、あれ持ってきて」
「はーい」
 シスターが持ってきたのは袋だった。『海水の素タヒチ』?

「これを水に混ぜるとタヒチの水になるのよ」
 本当に?僕は疑いの目で見る。

「何よ、信じないの?とにかく入れてみましょ」
 うーん、海水の素か。本当にタヒチの水になるのかな。多分、似せるだけだろう。本当に気分だけだな。でも、僕の為にしてくれたと思うと胸が熱くなる。

「どうしたの?なんで泣いてんのよ?」
 だって、嬉しくて……。

「あんた、今日おかしいよ。頭でも打った?」
 失礼な。でも、なんでだろう。涙もろい。いつもはこんなんじゃないのに。

「みっちゃん、この娘はずっとこんな調子なの?」
「ええ、実は……」
 みちるが今日の一部始終を伝えると姉さんは何事か考え込んだ。

「あんた、頭痛いとかお腹痛いとかある?」
「ある。お腹も頭も痛い」
「ひょっとしてアレじゃないかしら」
 アレ?僕にはわからない。みちるもわからないだろうと思って見たらハッとした顔になっていた。

「ゆうかさん、それって……」
「だって、もう一年にはなるじゃない。いい加減来てもおかしくないわよ。というか遅すぎるわ」
 何が遅いのか。

「でも、そんなに痛がっているようには見えませんけど」
「まあ、鈍感なだけかもしれないけど、ほらこの娘は普通の女の子じゃないから」
「確かに」
 あの、僕の事を話しているようだけど本人を置き去りにしないでくれるかな。あと、誰が鈍感だ。

「ねえ、シスターちゃん……」
 姉さんはシスターの耳元でごにょごにょと何事か伝え始めた。シスターはうんうんと頷いている。

「うん、多分そうだと思うよ」
「やっぱりそうだったのね」
「来るべきものが来たってことですね」
 ちょっと、なんなのさ。僕はたまりかねて3人に割って入った。

「もう、何事か僕にも教えてよ」
 あれ、どうしたの?姉さんもみちるも言いにくそうな顔してるけど。そんなされると不安になるからやめて。

「…生理よ」
 “せいり”?整理整頓なら毎日してるけど。

「違うわよ!生理よ生理!女の子特有の現象のアレよ!」
 顔を赤くしながら言うみちるに僕はようやく意味を悟った。そうか、生理か。噂には聞いたことがある。って、

「ええええええええええええっ!!?」
 マジで?だって、いままで無かったじゃん!

「それは完全に女の子になってなかったからだよ。でも、変だな」
 首を傾げるシスター。何が変なんだ?

「こんなに時間がかかるはずないんだけどな」
 なんか怖い。普通じゃ考えられない事態が起きてるってこと?

「大丈夫だよ、きっと」
 本当に?いや、生理が来るという時点でもう大丈夫じゃないんだけど。シスターはそんな僕の不安を知ってか知らずか満面の笑顔だ。

「これでやっと完全な女の子になれたね」
 素直に喜ぶべきかどうか。

「おめでとう!今晩は赤飯だね!」
 あ、ありがとう…。




 ※※※

初めて生理を取り上げました。詳しくないのでいままで触れずにいましたが、知識が浅い分おかしな点があると思います。ご了承ください。





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